エコ住宅支援4ヶ月早く終了(中日新聞)

令和4年12月2日、中日新聞朝刊に掲載されていた記事です。

 

 子育て世帯や若い夫婦が省エネ性能に優れるエコ住宅を新築した場合などに最大100万円を補助する国の支援事業を巡り、予算の上限に達して国が予定より4ヶ月早い11月下旬に申請受付を終了したため、補助金を当て込み新築契約をした人から不満の声が上がっている。後継の新支援事業の対象からも外れ、救済のめども立っていない。

 

《傾くマイホームの夢》

 

駆け込み申請殺到で上限に

 事業は国土交通省が実施していた「こどもみらい住宅支援事業」。エコ住宅の推進が目的で、新築が省エネ性能に優れた「ZEH(ゼッチ)住宅」などと認められると、十八歳未満の子どもがいる家庭や三十九歳以下の若い夫婦を対象に60万円~100万円が補助される。昨年11月下旬以降に契約を結んだ人が対象で、来年3月31日までに工事をある程度進めてから建築業者や販売業者を通して申請する仕組みになっていた。

 国交省は一般消費者向けのリーフレットなどで「予算が上限に達すると申請は締め切る」と告知し、毎月下旬に前月末までの申請戸数や申請額の累計を公表していた。11月18日に予算額の75%に達したことを公表すると新規の申請が急増。10日後には上限に達し、受け付けを打ち切った。補助金が受けられなくなることを心配した人の申請が集中したとみられる。

 国交省はエコ住宅補助対象とする後継の支援事業を2022年度補正予算に計上し、来年以降もエコ住宅を推進することとしているが、補助対象は事業が発表された11月8日以降に契約を結んだ場合に限られる。

それ以前に結んだ契約は、こどもみらい住宅支援事業に申請が間に合わなかった場合も含め補助対象外となっている。

 国交省住宅生産課によると、どちらの補助金も受けられない人たちから救済措置を求める声が複数届いているが、担当者は「現時点で、救済策について話せることは何もない」としている。

 交流サイト(SNS)上では「こどもみらい住宅支援事業の申請が間に合わず、後継の支援事業の補助金も得られない人たちが自分たちを「#こどもみらい難民」と呼び、国の対応を批判。

ツイッターでは「こどもみらい難民」を含むツイートが11月28日から12月1日までに100件以上投稿された。

ユースク取材班にも11月30日以降、複数の声が寄せられている。

 「夢にまで見たマイホームなのに、今は考えるだけで大きなストレス。胸の神経痛まで発症してしまった」。本誌の取材に応じた滋賀県内の消防職員山口望さんは11月28日夜、建築会社の担当者から「支援金の申請が間に合わなかった」とのLINEのメッセージを受け取り、ショックを受けた。

 建築会社と約4800万円で新築一戸建て住宅の契約を結んだのは8月だが、世界的な建築資材不足で、着工は来年1月まで待たなければならない。妻と長女の三人暮らし。

妻は長女を妊娠した昨年、看護師の仕事を辞め、家計は山口さんが支える。

支援金の100万円は年収の4分の1に相当する大きな金額だ。

 補助金対象となるよう、断熱性能を上げ効率の良い給湯器などを取り入れたため、工費もかさんだ。「支援金が得られないならもっと安い住宅にしたのに、はしごを外された気持ちだ。新しい支援事業も対象にならず、時の運だけで差が出るのは納得いかない」と唇をかむ。

 今月中に着工予定の大分県別府市の女性会社員は、大手住宅メーカーから「支援金の予算は十分にあるはずだから心配いらない」と聞かされ、エコ住宅の契約に至ったという。「建築資材も値上がりしているのに、支援金が入らないなんてどうしたら良いのか」

 会社員の夫と長男の三人で暮らす岡山市の女性看護師は、太陽光発電や蓄電池、手入れの簡単なレンジフードなど省エネ性能を備えた新築一戸建て住宅を地元の工務店と契約。

10月下旬に着工したものの、工務店による申請は間に合わなかった。「子育て費用がかかるのに支援金の当てがなくなり、二人目の子どもをあきらめないといけないかも。何とか救済措置を取ってもらえないだろうか」と願う。