住宅用太陽光陰る勢い

1月30日付けの中日新聞朝刊の記事です。最近、中日新聞の記事の紹介が多くなってしまってますね。

 

 再生可能エネルギーの導入拡大に向け、さらなる普及が求められる住宅用太陽光発電パネルの需要にかつての勢いがなくなってきている。

昨年12月に東京都が「義務化」条例を成立させるなど行政は推進するものの、数十万円から百数十万円以上かかる初期費用は一つの壁。

負担感を抑える業者側の工夫も始まった。

 

 電子部品メーカーなど関係企業でつくる太陽光発電協会によると、発電した電気を10年間、固定価格で電力会社に買い取ってもらえる制度(FIT)が始まった2012年ごろは、全国で年間27万件の導入があった。

しかし徐々に減り、ここ数年は新設住宅着工件数の10数%に当たる13万~15万件程度で推移。

需要は業界の期待を下回っている。

 協会は「人口減と新築の減少に伴い、導入件数は減少に伴い、導入件数は減りかねない」と危ぶむ。

パネル未設置の既存住宅への導入も「日照条件の良い屋根への設置は一巡し、急拡大は難しい」と言われる。

 住宅用が伸び悩む背景の1つに挙がるのが、FITでの売電価格の低下だ。

1KW時の価格は、12年度は今の卸電力市場の価格の約2倍に相当する42円だったが、22年度は17円まで下がってしまった。

刺激策の効果は薄れている。

 もう1つの壁が初期費用。

現在、標準的な容量「4KW」のパネルを新築住宅に取り付ける費用は、百万円前後とされる。

経済産業省などによると、10年前から約4割下がったが、資材価格高騰で直近は値上がり傾向。

住宅建設コストも高まる中、導入を見送る人は少なくないとみられる。

 といっても4KW程度もあれば、一般家庭が使う電力の大半を賄えるための電気代はうく。

最近は燃料価格の高騰で太陽光の電力の割安感が強まっている。

機材交換など維持費もかかるが、10年以上使えば費用分の「もとが取れる」とされ、長く使うほど得をする。

 さらに、停電時にも自家消費でき、蓄電池や電気自動車と組み合わされば、災害対策としての強みが増す。

住宅の断熱や効率化でエネルギー消費を実質ゼロ以下にするZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)にも欠かせない。

 実は事業用と住宅用を合わせた日本の太陽光発電は、世界屈指の規模に成長している。

20年の累計導入容量は中国と米国に次ぎ世界3位の規模。

国土面積当たりでは主要国最大。

それでも政府の30年度再エネ導入量目標を満たすには、今の1.5倍程度が必要とみられる。

自然破壊を伴わず、ビルや工場、住宅などへの設置を増やすことが期待されている。

 住宅とエネルギーの関係に詳しい早稲田大の田辺新一教授は「今後もパネル設置は増え、中長期的にはコストは下がる」と指摘。

「エネルギー自給率が11%と低い日本では、できる限り建物の屋根を活用する必要がある。

住宅で「自給」が進めばその分、工場で使う電気の再エネ比率が高まって脱炭素化が進み、産業の競争力向上にもつながる」と話す。

 

設置費補助やリース 企業も工夫

 

 中部各県のうち、住宅用の太陽光発電パネル累計設置数が最も多いのは愛知県で、2021年度は全国最多の23万基だった。

だが、十分とは言えず、県は30年度の取り組み指標として、7割増の40万基(太陽熱含む)を掲げる。

 導入をためらうのは「初期費用が高いと感じるから」と分析し、新サービスを打ち出す企業もある。

中部電力ミライズの「カテエネソーラー」は、一定条件で新築住宅のパネル設置費の一部(5KWの場合は77万円)を補助。

代わりに同社は10年間、売電収入と住民からの利用料金(月額6160円)を受け取る。

 同社はこのほか、補助金額を下げて利用料金を無料にするプランや、既存住宅向けのリース商品の設定。